テフ利用出版の試み

ネットでテフを使った出版について調べると、複数の有力な出版社が目にとまる。その中で、出版の使命とか理念とかに感心するプレゼンテーションを行っている出版社を選び、この場合は電話で問い合わせを行った。当方が何の紹介もなく直接アタックした事に大分戸惑っていたようであったが、まずは当方から概要を知らせる事になった。
2006年12月6日

    GT様
    突然の電話にて先ほどは失礼致しました。6日の午後に出版に関する問い合わせを致しました加藤です。お言葉に甘えまして、用意致しました原稿の概要をお送りいたします。ご検討の程、よろしくお願い致します。

    12月6日

    湖山

    連絡先:
    ーーー略ーーー

    原稿の概要:

    題目:「漱石の秘恋」 

    1.原稿はTeX使用。本文およそ317000字。400字詰めで790枚程度。
    2.A5縦にておよそ570ページ。ある程度までの形は出来ている。
    3.目次、索引、章番号等は自動生成。
    4.図・写真を100枚ほど使用。
    5.今後の推敲により、本文と図の カットも可能。

    要旨:(漱石の秘恋)

     夏目漱石の「三四郎」は、およそ百年前の本郷台を舞台に展開された物語である。作中で展開される散策のルートを丹念に歩きながら、漱石の他の著作も合わせ読むうちに、漱石自身の経験した青春時代の秘められた過去が、彼の文芸作品の中に埋め込まれているように感じられた。巷では迷路に陥った観がある漱石の恋人問題についても、数多くのヒントが見いだされた。そこで、明治四十一年までの漱石の人生の航跡と、彼の文芸作品・書簡・日記等との比較検討を行った。本書は、その経緯を詳細に記録し、検討過程で得られた決定的な証拠をもとに、漱石の秘められた恋人を明らかにし、恋人との心理的葛藤の末の明治四十一年の漱石自身の劇的な変化までを解明する。
     若かりし頃の漱石の恋人問題と明治二十八年の突然の松山尋常中学校への赴任には、今でも多くの謎が残されており、決定的な解明はなされていないようである。ところが、漱石が英国留学から帰国後に発表した文芸作品の中には、秘かに組み込まれた謎掛けが多数存在する事が認められ、それらの謎解きを行えば、漱石の恋人は特定され、その恋人との恋愛の経過が明解に読み取れる事が判明した。漱石は、恋人の住所の番地を作品の中に謎掛けとして折り込み、明治二十四年の再会から明治二十七年までの「男女相思」の期間、「男を捨てた」明治二十八年を数字として秘かに記述していたのである。
     こうした恋愛体験を経た漱石は、若い女性に対して非常に厳しい見解を持つに至った。漱石のそうした考え方は、明治四十年発表の「虞美人草」の頃まで続くが、明治四十一年に至り、かつての恋人には大きな変化が起こり、漱石自身の気持ちは劇的に変化する。その核心は、直後に急ぎ発表された「夢十夜 第一夜」の中の「百年はもう来てゐたんだな」という悟りに近い感慨に象徴される。漱石の心の中で、かつての恋人が復活したのである。その後の漱石は、かつての恋人との関係を物語のテーマの中心に据え、且つ、温かな筆致で物語を展開する。
     本書では、漱石の小説中に秘かに組み込まれた十個に及ぶ謎掛けを解いて、漱石自身の証言により、学生時代の初恋、闇に葬られた明治二十七年の「おどろくべき事」と破談、明治四十一年の「三四郎」執筆に至るまでの漱石の秘恋について解明し、彼の著作物との関連を考察した。

    以上

この出版社はWEBに相応の意気込みを掲載しているだけあって、きちんとした返事をいただけたのである。これだけでも希有の事と思わなければならない。

    お返事が遅くなり大変申し訳ございません。
    GTより引継ぎさせていただきました、KY会社、営業のSTと申します。

    >題目:「漱石の秘恋」 
    >1.原稿はTeX使用。本文およそ317000字。400字詰めで790枚程度。
    >2.A5縦にておよそ570ページ。ある程度までの形は出来ている。
    >3.目次、索引、章番号等は自動生成。
    >4.図・写真を100枚ほど使用。
    >5.今後の推敲により、本文と図の カットも可能。

    詳細な情報有難うございます。
    とりあえずお見積もりを出させて頂きたいと思いますので以下の情報をお教えください。

    @印刷部数
    Aカラー印刷の有無
    B製本の種類(並製本、上製本)
    Cカバーの有無
    D組版の有無(TEXですと自動組版でしょうか?)

    なにか御不明な点がありましたら、遠慮なくお尋ねください。

    どうぞよろしくお願い致します。

弱った。具体的な事などそれほど念頭にないのである。部数? 並と上とではどんなふうに違うのか。組み版はあるが、それが果して実際の印刷に通用するのか? 付け焼き刃でもよいから知識を仕入れて、せっかくの問い合わせに答えねばならない。

    ST様

    どうぞよろしくお願い致します。初めての事ですので、ご質問の意味を正しく理解しているか不安ですが、理解できる範囲でお答えいたします。現状を踏まえての質問も書き添えました。

    @印刷部数
    自費であれば最小単位と思います。100〜200部程度でしょうか。これは単価とか、追加の印刷との兼ね合いがあるかとも思われますが、そのあたりがよくわかりません。

    Aカラー印刷の有無
    図は全数108。その中の9枚をカラーで希望しています。

    B製本の種類(並製本、上製本)
    ページ数が多くなるので、硬い表紙が望ましいと(上製本?)思います。

    Cカバーの有無
    有りを希望します。

    D組版の有無(TEXですと自動組版でしょうか?)
    現状では、家の両面プリンターでdviファイルをプリントして、両面とも一応本のページの体裁に見えます。ノンブルと柱は左右別になっています。本用の印刷の最終工程を知らない事、使うフォント、章見出しの体裁などが最善ではないなどの不安要素があります。

    以上です。どうぞよろしくお願い致します。

    湖山

ST氏からは懇切な説明が返ってきた。

    お返事有難うございました。
    KY会社のSTです。

    > @印刷部数
    > 自費であれば最小単位と思います。100〜200部程度でしょうか。これは単価とか、追
    > 加の印刷との兼ね合いがあるかとも思われますが、そのあたりがよくわかりません。

    はい、最低部数は100部でございます。仮に組版(弊社で体裁を整える)をさせていただく必要がある場合は、かなり費用は違ってきます。以下の見積もりでご検討ください。

    @オンデマンド印刷、組版なし、100部、ハードカバー、校正1回
    560,000円+消費税

    @オンデマンド印刷、組版あり、100部、ハードカバー、校正3回
    1,580,000円+消費税

    表紙がカラー印刷の場合は+100,000円
    表紙のデザインが必要な場合は+50,000となります。

    宜しくご検討ください。

相当の事が判明した。この程度の金額だったら初版の金額が問題になる事はほとんどない。しかしまだいくつかの疑問点が解消されていないので、更に細かい質問を送った。

    Re: 見積もりへの質問
    ST様

    見積もりありがとうございました。コストを考える参考として、以下の質問を致します。どうぞよろしくお願い致します。

    1)初回の印刷の場合、部数と単価とはどんな関係でしょうか(組版なし)。
    200、500、1000の場合のコストを御教示ください。

    2)追加印刷の場合に、費用はどうなるのでしょうか。

    3)コストの内訳を御教示ください。コスト削減のために、図数の削減、カラー図の削減、小さいフォントを使うかあるいは内容を削ってのページ数削減等が考えられます。そうした時の参考にしたいと思います。

    4)図の著作権問題と削減について。
    本稿には著作権を考慮する必要がある可能性のある図が含まれています。これらの著作権問題について、出版界の常識のような点があれば、御教示ください。著作権から使用できない場合、あるいは、使用するには大きな費用がかかるような場合には、削除する必要が考えられます。

    5)印刷時のフォントはどうなるのでしょうか。選び方によりコストの差が出ますでしょうか。

    6)校正の内容について。
    本原稿は出版に関係する専門家の目を通していないので、不都合な内容が含まれている可能性が考えられます(著作権、個人的なプライバシー等)。又、本に関する基本的な常識が欠如している可能性もあります。そうした点は、校正時の項目中に含まれるのでしょうか。

    7)ご提案いただいたコストは、自費出版を前提にしているのでしょうか。ISBN番号はつくのでしょうか。

    以上です。どうぞよろしくお願い致します。

    お返事が遅くなり申し訳ございません。
    KY会社のSTです。

    > 1)初回の印刷の場合、部数と単価とはどんな関係でしょうか(組版なし)。
    > 200、500、1000の場合のコストを御教示ください。

    200部: 900,000円+消費税
    500部:1,450,000円+消費税
    1000部:1,875,400円+消費税

    ※300部以上の場合はオフセット印刷となります。

    > 2)追加印刷の場合に、費用はどうなるのでしょうか。

    300部以下の場合は、追加の場合も殆どコストは変わりません。
    表紙デザイン料金などは差し引かれます。

    > 3)コストの内訳を御教示ください。コスト削減のために、図数の削減、カラー図の
    > 削減、小さいフォントを使うかあるいは内容を削ってのページ数削減等が考えられま
    > す。そうした時の参考にしたいと思います。

    コストに大きく関係するのは総ページ数とカラー印刷の点数、部数です。
    ーーー略ーーー

    > 5)印刷時のフォントはどうなるのでしょうか。選び方によりコストの差が出ますで
    > しょうか。

    差はでません。ただし、当社所有のフォントに限ります。別途、特殊なフォントを必要とされる場合は、料金がかかります。
    >
    > 6)校正の内容について。
    > 本原稿は出版に関係する専門家の目を通していないので、不都合な内容が含まれてい
    > る可能性が考えられます(著作権、個人的なプライバシー等)。又、本に関する基本
    > 的な常識が欠如している可能性もあります。そうした点は、校正時の項目中に含まれ
    > るのでしょうか。
    こうした内容に踏み込んだ校正は「校閲」と呼んで文字「校正」とは区別しています。当社では、校正は行いますが、校閲は行えません。別途、外注することになります。

    >
    > 7)ご提案いただいたコストは、自費出版を前提にしているのでしょうか。ISBN番号
    > はつくのでしょうか。

    自費出版前提です。ISBNはつけられますが、上記、校閲のすんだ原稿に限ります。ISBNをつけるということは、版元として出版物に責任をもつということになります。その際、校閲のすんでいない本は責任をとれません。

    校閲費用は、別途4〜50万円必要です。

    おすすめとしては、ISBNをとらない個人出版物としてだされ、書評などを御願いしてみられることでしょう。個人出版でだされて、反響が大きいようでしたら、ISBNをつけた出版にすすまれればよいかと思います。おそらく、その過程で、さまざまなアドバイスもいただけることと思います。それからISBNをとられても遅くはないですし、あるいは、大手出版社から声がかかれば、印税がはいってきます。最初から大部数を刷るリスクをとるべきではないと思います。

    どうぞよろしくお願い致します。

本当に丁寧に応対していただいたと思う。仮にテフ方式で出版する場合には、KY会社に是非お願いしたいと思う。