『謎解き 若き漱石の秘恋』 (加藤湖山 著:アーカイブス社刊)の紹介


  • 本書の内容:

    夏目漱石は明治二十八年に、突然松山の尋常中学へ赴任するが、この背後には失恋問題があったとのうわさがある。漱石の恋人に関しては、論議が咲き乱れており、結論は出せない現状である。本書では、公表されている漱石の文芸作品・資料等を分析して、作品の中に秘かに埋め込まれた、漱石の秘恋に関する数多くの謎解き問題を発見し、それらの解読結果をまとめた。これにより、漱石の恋人は特定され、漱石の恋人問題に関する謎のほとんどは解明されたと言っても過言ではない。

本書の外観

『謎解き 若き漱石の秘恋』(477ページ)アーカーブス出版社刊


  • 本書中で解読した謎掛けの一節を紹介します。明治38年(1905年)に発表された漱石の『一夜』の中の次の文章に、若き漱石の恋人を示唆する謎掛けが隠されています。漱石に詳しいと自信ある方々、どうぞこの謎解きに挑戦して下さい。

    髯:「百二十間の廻廊に二百三十五枚の額が懸つて、其二百三十二枚目の額に書いてある美人のーーー
    女:「声は黄色ですか茶色ですか」と女がきく。
    髯:そんな単調な声ぢやない。色には直せぬ声ぢや。強いて云へば、ま、あなたの様な声かな」

    この部分には、漱石が思いを寄せた女性の住所が埋め込まれていたのです。謎解きの詳細は本書の第15章15節をご参照のほど。

    この謎掛けを解読した結果について、本書では次のように記しています。

    『一夜』の登場人物は二人の男と美人の女である。二人の男は髯の有無で区別されている。ここで、 漱石は女の住所を謎掛けの形で『一夜』の中に織り込んでいたのである。その謎掛けを解いて得られ る数字は49、そして、もう一つ別の数字73が49と対になるように記述されている。この二つの数字は、楠緒子生家(麹町区一番町49番地)と法蔵院(小石川区表町73番地)を表している。従って、美人の女は楠緒子であり、髯ありの男は法蔵院に住む漱石を表す。
    当然ながら、髯なしの男は小屋と推定される。このように、漱石は法蔵院と関連させて楠緒子を示唆しているので、明治二十七年に法蔵院に出入りしていた女性は大塚楠緒子と推定される。
     ーーー略ーーー 一つの謎掛けでは偶然の一致だろうという疑問に対して、そんな事はないと言わんが如く漱石自身が執拗に繰り返して謎掛けを織り込んでいる。それらは本稿で順次解き明かしていくーーー略ーーー
    漱石はここで生涯に一回だけ相手の女の素姓を明らかにしていたのである。ーーー略ーーー


    『謎解き 若き漱石の秘恋』(アーカイブス社刊)には、多くの謎掛けの解読結果が記されています。漱石の小説中の、どこに謎掛けがあるかは、次の目次を見ればおよそわかると思います。

  • 『謎解き 若き漱石の秘恋』の目次 (最終稿)

    実は、初稿の構成は次のように長いプロローグを含むものとなっていました。わずかですが内容の解説も附属しています。
  • 『漱石、百年の秘恋』(初稿タイトル)の目次 (初稿)

    ページ数の制約により、本書は索引をカットせざるを得ませんでした。ページ索引と章節番号索引の形で、『謎解き 若き漱石の秘恋』の索引をここに掲載致しますので、御利用下さい。

  • ページ番号による索引
  • 章節番号による索引